東陸一《あずまりいち》

22/107
前へ
/356ページ
次へ
「勝手に開けんなよ」 「ああ。ゴメン。で、塾には行くの?」 「たぶん? なんで?」 「塾終わってから、園美ちゃんの所に、葡萄持って行ってほしいのよ。園美ちゃん好きでしょう? 今年もたくさん送られてきたから」 「母さんが行けばいいのに」 「私は今日は、予定があるの。それに陸一が行く方が園美ちゃんも喜ぶわ」 どうせ、市議かなんかの後援活動とかだ。くだらない。 それでも俺は大粒のマスカットが入った袋を受け取った。確かにねーちゃんの大好物だ。 「母さんはなんで、ねーちゃんの一人暮らしを許したんだよ?」 母さんの目が一瞬おかしな動きをしたような気がした。 「園美ちゃんが期間限定って約束したからよ。陸一、葡萄お願いね」 バタンと母さんはドアを閉めて俺の質問をはぐらかした。 俺は何かある。とは思いながらも、何時頃ねーちゃんの所に行けばいいのかねーちゃんにメールを送って、着替え始めた。 .
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

735人が本棚に入れています
本棚に追加