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「勝手に開けんなよ」
「ああ。ゴメン。で、塾には行くの?」
「たぶん? なんで?」
「塾終わってから、園美ちゃんの所に、葡萄持って行ってほしいのよ。園美ちゃん好きでしょう? 今年もたくさん送られてきたから」
「母さんが行けばいいのに」
「私は今日は、予定があるの。それに陸一が行く方が園美ちゃんも喜ぶわ」
どうせ、市議かなんかの後援活動とかだ。くだらない。
それでも俺は大粒のマスカットが入った袋を受け取った。確かにねーちゃんの大好物だ。
「母さんはなんで、ねーちゃんの一人暮らしを許したんだよ?」
母さんの目が一瞬おかしな動きをしたような気がした。
「園美ちゃんが期間限定って約束したからよ。陸一、葡萄お願いね」
バタンと母さんはドアを閉めて俺の質問をはぐらかした。
俺は何かある。とは思いながらも、何時頃ねーちゃんの所に行けばいいのかねーちゃんにメールを送って、着替え始めた。
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