北山耕平《きたやまこうへい》

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この学校に入学したからと言って、僕の日常はほとんど、変わりませんでした。 だいたい、どこに行っても、数日で、僕を見ている人の目の色が変わります。 目の色って本当に変わるんですよ。瞳孔の開き具合が変わるんでしょうか? そして、ピンと緊張感が張り詰めて音を立てるんだ。 この町のどこへ行っても……。 この町にとっての僕はそう言う存在なんでしょう。 けれどそれだけでは済まないのだと思い知った出来事もありました。 あるとき、校門で待ち伏せしている、団体の観光客が僕に向かっていいました。 「北山耕平くんですか?」 「うわ。本物、すげえ」 「写真撮っていいよね? えーなんで? じゃあ1枚だけ。1枚だけならいいよね?」 東京の大学のオカルト研究会だか何だかの人たちは、ネットで母が殺された事件に興味を持って、検索に検索を重ねて、この椿ヶ丘まで来たと言うんです。 この町、でなくても、ネットでこんな風に自分が見られるのか? 見つけられてしまうのか? と思うと、絶望的な気持ちになりました。 「や、やめてください」 「いいじゃん。転載したりしないから、ね?」 「やめろって、本人が言ってるのが聞こえないの!? 盗撮する気なら、すぐ警察呼ぶよ?」 僕がハッと後ろを向くと、携帯電話を片手に大学生を威嚇している女子がいました。 大学生はしぶしぶ、学校を後にしました。 この時威嚇してくれた女子こそが、渋谷唯香さんでした。 .
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