東陸一《あずまりいち》

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蔵には、曾祖父さんが蒐集していた、日本刀もある。手入れはときどき、業者が来ていたような気がする。けど、それに、殺傷能力があることなんか、忘れていた。 ねーちゃんの下腹には、曾祖父さんの脇差しが、刺さっていた。 「ねーちゃん、救急車呼んでくる」 「り……ちゃん……。よ、ば……ない、で」 「このままじゃ、ねーちゃん、死んじゃうよ。いったい誰が!?」 「ちが、の。わた……し。じ、ぶんで」 こんな事を自分で? 切腹みたいなこと、ねーちゃんができるはずない。 「とにかく、救急車呼んでくるから」 「だ……め。じぶん、で、おわら……せたかったの、もう、すぐ、おわる、から」 「何で、何でだよ。俺の言うこと、何で聞いてくれなくなったんだよ。救急車呼んでくるから、ねーちゃん、死んじゃだめだ!」 .
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