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入学式の数日後だったはずだ。サッカー部に入るつもりで、放課後、グラウンドに見学に行っていた。
「もしかして、園美さんの弟?」
肩を叩かれたので、振り返ると、渋谷唯香はそう言った。
ねーちゃんの名前を久しぶりに聞いて、ギクリとした。4つ離れているから、同中の同級生でも俺にねーちゃんがいるのを知っている人間は少ない。なのに、なんでこの女子は……。
「そうだけど、あんた、誰?」
「私、園美さんと友だちなの。渋谷唯香です。あなたは陸一くんよね? 園美さんがいつもあなたの事話してる」
「そうだけど」
「園美さん、元気? 最近全然連絡ないけど……」
口の中が、カラカラになった。
ねーちゃんが元気なはずがない。ねーちゃんは俺が………。
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