枯れた大地と灰の空

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「じゃあ、とりあえず預かってあげるから、早く離してくれないかな?僕もそろそろ行かなくちゃ怒られる気がするんだけど………」 「おぉ、そっか。わりぃな。じゃ、結果期待してるぜ?」 「いつになるかわからないけどいい報告しに行くよ」 いつもの掛け合い。 いつになるかわからない約束だけしていつものように僕は鍛冶場に向かう。 「はぁ、やっぱりダメか」 ため息は吐いてみるものの、ダメとわかっていればなんとなく気が楽だった。 ただまぁ、ノエルが持ってきた鉱石を今日も無駄にしてしまったと考えると少し申し訳なくなる。 まぁ、いつものことだから仕方ないな、なんて考えて。 鉱石を使い切ってしまったから帰ろうと、ノエルが持ってきてくれた袋を持ち上げて、その中に一冊の本が入っていることに気が付いた。 それは小説だった。 他愛のない、二人の少年と少女が虹を追いかけて草原を走っていくという話。 まぁ、虹がどんなものかわかるわけもなく、僕らは彼らがどのようなものを追いかけているのかすら想像できないけど、それがひどくうらやましい物語であることだけは確かだった。 「くそ、ノエルのやつ……嫌味かよ」 「お、懐かしいねぇ……虹のふもとじゃねーかよ」 「おやっさん」 僕の後ろからその本を覗き込むようにしてそんなことを言ってきたすごくガタイのいいハゲの男性。 僕はおやっさんと呼んでるけど、本名は知らない。みんなもおやっさんとか呼んでるせいもあって誰も本名を知らないんだと思う。 とにかくおやっさんはその僕の本を覗きながら 「昔はオレもその本に書いてあるように虹を作ろうと頑張ったもんだったなぁ………そうだ、アイン。お前さんはこんな噂話知ってるか?」 「うわさ?」 「あぁ、色ってのには波長があるらしくってな?その波長をどうこうすることで何色でも作れるって話よ」 「そのどうこうが大事なんだと思いますよ?」 「だから噂なんじゃねーか」 たしかにそうだ。そのどうこう、がわかってしまえばみんなが青と緑を作って僕は毎日の苦行から開放されることになるはずなんだ。 ただ、その波長という話は少しだけ、僕の希望になった。 というのも、一つ。 僕のご先祖様が残してくれた道具が、そんな波長を観測する道具だった気がするからだ。
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