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「深い理由はありません。1日でも早く良い話は進めたいだけです。なんだか私のせっかちが出てしまったようですみません。お気持ちを害されてしまいましたか?」
「いいえ、こちらこそ何度も足を運んでいただいているのに、のんびりしているようで申し訳ないです。いずれこちらから御社へ伺えたらと思いますので、専務のご都合をお聞かせください」
深く追求することなく、梶本さんは話を纏めようとしている。室内の空気も一気に緩み、用意していたコーヒーにそれぞれが口をつけた。
「椿さんは最近までお休みを取られていたそうですね」
「はい。遅めの夏季休暇をいただいておりました」
「御社へ連絡差し上げたのですが、ご不在と聞きましたので。どちらかへご旅行でも?」
「えぇ、スペインへ行っておりました」
にこやかに話すけれど、かなり無理を強いられているせいで胃がキリリと痛む。
「スペインですか、いいですね。もしかして高丘さんとご一緒でしたか?」
不意に目の前が爆発して閃光で支配されたような視界が、一瞬真っ白になった。
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