rule 17

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 翌朝、夜の間で乾いた洗濯物を取り込んでから煙草を吸いにベランダに出た。9時過ぎの平日、高丘さんは会社にいるだろう。たった1週間会えないことなんて今までもあったのに、遠く離れた地へ行くせいか無性に寂しくて、隣室を見ることなく部屋に戻った。  『おはよう。昨日はありがとう。忙しいと思うけど、お仕事頑張ってね。予定通り、午後には日本を発ちます。向こうに着いたら、また連絡するね』  メールを送って空を見上げ、両腕を突き上げて伸びをした。  支度を済ませて1階に着くと、壁や床の養生を始めようとしている引越業者とすれ違い、エントランス前の道路には大きなトラックが停められていた。戸数が多いせいか、このところよく目にする光景に季節を感じる。会社の異動がある時期や学生の動きがある春先は特に多い。  スーツケースを引いて駅まで続く歩道を進む。  イヤホンから流れてくる曲につられて自然と鼻歌が出てしまうのは、高丘さんがよく聞いている洋楽が、気付いたら好きになっていたからだ。
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