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プロローグ
ーーー
息が白くなるほどの冷えた夜の京。月の光を背にして一人の男が立っていた。
「…ハァハァ、ケホッ、あなただったのね…」
千絵はいち早く気配を察知し追った。だが逆光でよく見えない。
「イヒヒヒッ…やっと会えたなあ。まさか京まで来てるとは。一年前はしくじっちまって、ばばあを殺しちまったしなあ?…次は仕留めるぜぇ」
「っ!!お前が静江さんをっ!」
「だったらどうだって言うんだ?仇でも討つか?ケケケ。獲物はそうでなくっちゃ仕留めがいが無いってもんよ」
「どうして!どうしてあたしを狙うの?!」
「 んなの上からご命令よ。ま、俺は殺しさえできればなんでも良いけどな、ヒヒッ」
月を覆う雲が流れ月の光が差し込んだ。黒の忍び装束。胸には蒼魔(そうま)の紋。布で顔を覆ってはいるが、にやりとした目元は隠れてはいない。
と男はそう言うと同時に、苦無を投げた。
千絵の腕を掠める。
そこで男が一気に距離を詰める。
「なあ、なんか喋れよ。つまんねぇぜ」
千絵を見た男は心底つまらなそうにしながらも攻撃はやめない。
素早い動きで千絵をなぶるように弄(もてあそ)ぶ。
攻撃をなんとか受け止めるが、少しずつ傷ついていく千絵。
「つまんねぇ、これで終いだ。ヒヒヒ」
……男は狂気的な笑みを浮かべ、苦無を持ち直し勢いよく千絵の胸を貫いた。
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