1722人が本棚に入れています
本棚に追加
──あの状況に別の意味と
危機があったってこと、
9年経ってから判ったって。
「……言ったよね。
兄さんには譲れないって」
「聞いた、けど」
「俺はね、あの人、
好きじゃないんだ」
「……」
「俺がどんなに努力しても
手に入れられないものを
全部持ってるくせに、
不満そうにする。
……許せないよ」
そう言って、
誠司はあたしから手を離す。
「怖がらせて、悪かったね。
どうしても顔が見たかったから」
.
最初のコメントを投稿しよう!