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腕の中に抱いたままに
してくれる拓海さんを
あったかいなぁ、
なんて思いながら、
あたしはそれを微睡みつつ
聞いていた。
そんなこと考える必要
ないのに……って。
拓海さんだって
声で旋律を奏でれば、
聴いた人みんなを幸せにできるもの。
誠司は弟なだけあって、
拓海さんと少し声が似ている。
でも誠司が歌ったからって、
言い方は悪いけど彼を
気に留める人はきっといない。
だけど、
拓海さんの寂しげな声を覚えている。
「そんなことないよ」と眠気の波に
さらわれつつ一生懸命それだけを
口にしたあたしを見て、彼は笑ってた。
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