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「来栖咲人です。趣味は読書とかです。よろしくおなしゃーす」
少し飛んでホームルームにて。
教師に言われるがままに名前をフルネームでクラスメートに伝え、添え物に趣味を投下して適当に挨拶をする。3秒ほどで思いつくベーシック挨拶なのにクラスメートの皆様はパラパラとだけど拍手をしてくれた。拍手が止んだ後、俺は教師が指定した席まで歩く。窓側の列の一番後ろの席だ。
「よろしくね、転校生くん」
「はっ? ……あ、あぁ。よろしく」
突然隣の席の女子に笑顔で話し掛けられるもんだからびっくりした。つい脅かすような声を上げてしまったが、どう感じたのだろう。彼女はさして気にする様子も無く、教壇に立つ教師の話を聞く。
ちなみに何の因果か、風奈とは偶然同じクラスのようだ。教室を見渡してみたら真ん中ら辺の席に風奈が座っているのが見えた。彼女もこちらの事を見ていたようで、目が合ったと思ったら急いで前を向いた。どんだけ挙動不審なんだあいつは。
ホームルームが終わり、教師が立ち去る。それと同時に先ほど声を掛けてきた女子が俺の方を向き再び笑顔で話し掛けてくる。
「ねーねー、転校生くん転校生くん」
「俺の話を聞いてなかったのかよ……。俺は来栖咲人って名前があるんですよ。呼ぶなら来栖か咲人かお兄ちゃんかご主人って呼べよ。なんだよ転校生くんって」
「後ろの2つの方が疑問を抱かれそうな気もするけど……」
「で、用はなんだい?」
「いや別に大した用は無いんだけどさ。ほら、一応隣なったんだし自己紹介とかさ」
「ふーん」
ありふれたイベントの一つだな、転校生に用もなく話し掛けるって。この人も友達いないのかな~って思ったけど、遠くから女子生徒が声を掛けてきてる辺りその読みはハズレらしい。
「えーっとねぇ、私は竹下喩花(たけしたゆか)。竹下はまんまで、比喩の喩に花火の花で喩花。これからよろしくね、来栖くん」
「そりゃご丁寧にどうも」
竹下が「サラリーマンみたい」と笑う。
マシュマロボディで童顔、サイドテール。そんな俺好みの美少女の笑顔に童貞が興奮しないわけもなく。
クシャッ。
「……? 何してるの? 紙なんか丸めて」
「増援を呼ぼうと思ってね」
俺は読書をしている風奈に向かって思いっきり消しゴムを紙で包んで作った弾丸を撃ち放つ。被弾した彼女は紙を広げた。
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