2話「ぺ天使」

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「痛っ!」 「おい風奈、童貞である俺を助けろ」  少し大きめの声で風奈を呼ぶ。こちらを見てこそこそ話していた女子連中、話しかけようとしていたと思われる男子連中がその一言で動きを止める。こりゃ失敗したな。 「……何」 「俺は彼女居ない歴が年齢なんだよ、女子とまともに話した事が無いんだよ」 「……私は女子にカウントされないの?」 「そりゃお前、幽霊みたいな女に恐怖以外の感情抱くかよ」 「幽霊!?」  風奈と楽しくお話をしていたら、置いてけぼりを食らった竹下があははと笑い、俺と風奈を茶化して会話に入る。 「えーっと、なんかよく分からないけど何? 二人は知り合い? てか、不登校だった高町さんが来たのって、来栖君が何か関係しているのかな?」 「不登校?」  耳を疑う単語が出てきたのでつい聞き返す。風奈は何も答えず、代わりに竹下が笑顔で俺の問いに返答を返す。 「そうだよ。5月の初めから今日まで約二ヶ月の間、高町さんは学校に来なかったんだ。何でかは知らないけど、不登校になる前から暗くて誰とも話そうとしないから人付き合いとか苦手なのかなーって思ってたけど、今日は意外だったよ」  と、そこでチャイムがなる。予鈴じゃなくて授業開始のチャイムだ。教師はまだ来ていないがさすがに時間が時間なので風奈は黙って席まで歩く。 「後でまた話そうね。来栖くん」 「……お、おう」  竹下はにこやかな笑顔を俺に見せる。  俺は転入生だ。よって、ノートの類は持っているにしても教科書や参考書等のアイテムは何も持ち合わせていない。  と言うことらしい。俺は隣の席である竹下に机をくっ付けられ、一緒に一つの教科書を見る羽目になっている。ただどちらともあまり視力は良くないようで、ある程度教科書に顔を近づけないと見えない。 「……暑いね」 「おう……」  竹下の頬と俺の頬がぶつかりそうなくらい近づいている状態で会話をする。この近距離なら周りに聞こえないような小声でも会話することが出来る。しかしハタから見たらどうだろう、可笑しな二人組だろうか? まるで教科書を取り争ってるように見えるんだろうな。頬で。 「……なんでこんな目が悪いのにメガネ買わないわけ?」 「ださくね? メガネ」 「そんなんだから目付きが悪かったわけだ。最初不良さんと勘違いしちゃったよ」 「不良さんと思っていながら話しかけるなんてやるな」
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