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「さ、上がって上がって! 咲人君の為にゴミ屋敷同然の我が家を綺麗にしたからその成果をその目に焼き付けて! 焼印して!」
「……は、はぁ。失礼します」
初対面……ではないけどあまり接点があるとは言えない間柄なのに親しげに接してくる高町さんに戸惑いながらも家に上がる。車に乗ってた間見えた街はあまり田舎っぽい印象を受けなかったが、この家は形容するならおばあちゃんちって感じの例えがしっくりする。
家の造り自体は古くどの部屋も和室、畳敷きじゃないのは玄関から居間を繋ぐ廊下くらいだ。高町さんが無理やり手を掴んで家を案内してくれるのでそれに抵抗せず紳士的な笑顔で従う。
……高町さんの手はとても年上の女性とは思えないくらいスベスベでモチモチだった。胸も膨らみかけの成長途中って感じがするしこの人は本当に俺の叔母なのだろうか?
「じゃ、お茶持ってくるから座って待っててね」
一通り見た後高町さんは笑顔で退室する。俺以外誰もいなくなった空間には風鈴の音だけが鳴り響く。
「……はぁ」
よく分からないまま家に手招きされたが、ようやく休憩時間が訪れた。朝から動きっぱで蓄積した疲労を放出するため仰向けに倒れて息を深く吐く。ったく、あのクソ親父に後で文句言ってやらねーとな。どこのどいつか知らないけど俺にガキの世話押し付けんなって。あのチビっ子のどこが俺の叔母なんだよ、むしろ俺が叔父と言われた方が自然だっつーの。
「ん……」
「あん?」
襖から小さな声が聞こえたのでそちらに視線を向ける。小さな声を発した主は俺と目があった瞬間襖に全力で隠れた、しかし残念ながら頭のてっぺんが隠れれてない。尻を隠して頭丸見えってか。
俺は重たい腰を上げゆっくりと襖に接近する。スニーキングミッションをしている感覚で隠密的に足音を殺し近づく。
「見ーつけた」
襖を一気に開ける。主は踵を返して逃げようとするので足を掴んで転ばして小脇に抱えて捕獲する。
「捕まえたー」
「は、離して……!」
「捕虜よ。助けを請うなら名を名乗れ」
「……」
「……いや黙んなよ。人を脇に抱えるってどんだけ辛いと思ってんだ。重いんだよ」
「……あなた、誰」
「俺の言った言葉を自分流にアレンジして打ち返すんじゃないよ」
「……私は高町風奈(たかまちふうな)」
高町……まぁ予想はしていたが娘かなんかか。あの人と違って静かな子だ。
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