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「てか、お前の部屋って何か無機質というか、質素な感じだな」
「……思い出を残すのは、怖いから」
「怖い?」
「……」
風奈の目からハイライトが消える、そんな表現が妥当だろうか。俺が発言に対して追求しようとしたらさっきまでのひ弱な雰囲気とは一転、まるで心が無い人形のようなオーラを纏う。
「あ、えーと、お前っていくつなんだ?」
怖かったので話題を変える。さっき高町さんが血が繋がってない家族であることを仄めかした事も込みで、こいつは少し特殊な過去があるのだろう。今は深く言及するのは止めておこう。
「17。……高校二年生」
「ふーん、俺と同い年……そいや、俺の転校する学校と同じ学校だったな、高町さんに聞いたよ。じゃ、月曜はよろしくな」
「え?」
「いや、え? じゃなくて。色々と手取り足取り案内してくれよ、チャリ一台しかないならニケツしてくし。別に良いだろ?」
「……う、うん」
風奈は儚げな顔で首を縦に振る。
「……」
「……」
適当に振った話題について語り終えた瞬間、沈黙の時間が訪れた。風奈は決して自分から口を開こうとしないし、俺は何を言ったらいいのか分からないので口を開けない。
「……」
改めて風奈の容姿を見てみる。風奈は先ほどまでの異常な行動が目立つせいで容姿に全く意識が向いてなかったが、マジマジと見てみたら中々の美少女だ。腰まで伸びる髪はツヤツヤだし、肌は雪のように白く肉付きも良い方だ。小顔で緩みきった表情は見る側を癒してくれるヒーリング効果があるような気がする。ただ、母親ほどではないにしても身長が低い、多分140㎝代後半だ。
「……な、なに? 顔に何か……つ、付いてる?」
「いや、可愛いな~って思っただけ」
「ッ!?」
アニメ的な例えで非常に現実からかけ離れた表現をするが、風奈の頭がボフッと煙を吹いた。みるみるうちに顔は耳まで赤くなり、風奈はそっぽを向いて手でほっぺを強く揉みしだく。なーにしてんだこのコミュ症女は。
「か、可愛くなんかない!」
「そっぽ向きながら反論するなんて、更に可愛いな。株が急上昇したよ」
「だ、だから……!」
「何をそんなに否定する必要があるんだよ? 普通に可愛いの部類に入るルックスしてると思うぜ?」
「……馬鹿じゃん」
彼女は小声で言った。
「あ? 何で」
「うるさいうるさい! 出てけ!」
追い出されてしまった。
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