第1章

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もう何年前かは覚えていない。そのぐらい前に子供の俺は名目上、ある組織に預けられた。 良悪を親の判断に委ねていた子供は駄々もこねずに素直に親の言葉に従った。 白衣を着た男達に手袋越しに手を引かれて白い廊下を歩いたのを鮮明に覚えている。 青と黄色のオッドアイでこの施設を見渡すが、子供の目線からは何もわかりはしない。 ただ、恐ろしかった。 逃げ出したい衝動に駆られるが、その術を持たない子供は連れ込まれるまま暗い部屋に放り込まれ、訳も分からず拘束され、そして、左肩に烙印を妬かれた。 【087】 これが俺の名前となった。 泣き叫んだ。 助けを求めた。 やめて、と懇願した。 そんなこと、無意味で… その頃の記憶は途切れ途切れにしかない。
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