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午後九時。
人通りが少ない道をまだ高校生である俺、上原樹は走っていた。
この時間だと、警察官に見つかってしまったら確実に補導されるだろう。
それに、家でお風呂に入っている母が上がる前に帰って来なければならない。
俺に与えられた時間は約四十分だ。
学校まで往復で約三十分だから少し余裕があるが、俺は歩こうとは思わない。
夜道を一人で歩くのはこんなにも怖いのか。
それに、もし不良に絡まれたらどうしよう。
撃退できるような力は残念ながら持ち合わせていない。
俺は大丈夫、もうすぐだと自分に言い聞かせる。
そもそも何故こんな時間に出歩いているのかというと、端的にいえば宿題を学校に忘れたからだ。
別に俺は根からの真面目というわけではない。
問題は忘れた宿題の教科の先生だ。
近藤由佳。生徒の間では女王様と呼ばれている先生。
とても美人で白衣を着ると色っぽいのだが、性格にかなりの問題がある。
サディスティックで生徒に暴言は当たり前。
だが、たまに先生らしい所もあり憎めない人だ。
しかし、一度でも宿題を忘れたら一週間先生に僕扱いされる。
体験したことがある生徒の話によると、色んな雑用を押し付けられ、それは苦痛で仕方がないらしい。
俺はあの先生が大の苦手であり、だから今こうして走っているのだ。
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