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逃げなくては…殺される。
怪我ばかりの裸足の足で必死に走る
目の前にはとても暗い、森の入口
少年はそこに向かってただひたすらに走る
月のない暗い夜
北のルドフィー国、南のアルヴァ帝国の中間人が立ち入ることのできない暗く光の射さないヨルの森。
森の入口に鈴の音が響く
鈴の音は、疲れ果て倒れるようにして眠る少年に近づく。
闇から響く鈴の音は、徐々に猫の姿をとる。
「少年、起きなさい」
鈴がなるような小さなとても優しい声が猫から発せられる
「……っ!?」少年は薄く目を開き、猫の姿を目にし息を呑んだ。
「ここはあなたのような人間が来るような場所ではないわ。早く自分の居場所に帰りなさい」
猫が優しく少年に語りかける
少年はぼんやりとした頭で考える、自分の居場所なんてあったのだろうかと。
「早く、帰りなさい」そういうと少年から離れようとした。
「嫌だ、おいてかないで…」
少年は頭を抱えみを縮めた。猫は少年の体が小刻みに震えていることに気がついた。
「私、リンっていうの。あなたの名はなんていうの?」
猫は少年の前に座った。少年の目にはゆらゆらと揺れる猫の尻尾が映っていた。尻尾が揺れる度そこに結ばれているリボンについている3つの鈴が綺麗な音を立てた。
不思議とその音は心地よく耳に響いた。
「僕の名前は…ない、です」
好きなように呼ばれてきた、と。
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