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この人の言葉を話す猫もきっとこの森に住むと言われる魔物なんだろう。
でも、今まで出会った人間たちより優しく自分に接してくれている。
「僕はここにいてはいけないのですか?」まっすぐにリンを見つめていいます。
「ここにとどまりたいのならヒナに話を聞いてご覧なさい。でもね、彼女はとても人間が嫌いなの」
―ヒナ、とは誰のことだろう。
「…でも、僕は人間じゃないので大丈夫です」
「僕は人間じゃない、奴隷です。ただの家畜と同じ奴隷です」
そういい少し泣きそうな顔で笑う。
リンはその一言でなぜ少年がこれほどの傷を負っているのか、ここから帰りたがらないのかを察しました。
「そう…だから名前がないのね。でも大丈夫。ここにはあなたを奴隷だなんて思っている人はいない、だから胸を張って生きていいのよ」
少年はとても驚きました。今まで少年のことを人間だと、生きていいと言ってくれる人はいなかったからです。
家畜、ゴミ…そういう扱いを受けてきたからそれが当然で少し悲しくなるだけでした。
なので自分の事を人間だと言って生きてもいいと言われたことに戸惑っていました。
リンは森の奥を尻尾で指し、少年をまっすぐ見つめて言った。
「この森にいたければヒナに名前を貰いなさい。この先の川のほとりに彼女はよくいるわ」
運がよければ、また会えるわ。
リンが指す方向にひとつの明かりがともった。
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