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「あぁ…そうさせてもらうかな…。」
俺は柄沢の視線から逃げる様に視線を逸らした。
ダンッ
もう一つの腕が俺の行く手を阻んだ。
必然的に再び柄沢と向き合う様になってしまう。
「もう一つ聞かせてくれよ。お前…誰とヤッた?」
「誰って…一人しかいねーじゃん。」
ドキドキしながら答える俺に、柄沢は顔を近づけて…
何度か匂いを嗅ぐ仕草を繰り返した。
そうして、暗い瞳のままニッコリ笑い…
「匂いが変わったな…前はこんな匂いじゃなかった。」
ゴクリと息を飲む
柄沢は笑って続けた
「お前…知らねーみたいだけど…今のお前は、ヤリまくった次の日の梓と同じ行動なんだよなぁ…。」
「柄沢…冗談はよせ。」
柄沢の笑顔は崩れない。
「………。まぁ…言いたくねーなら、無理には聞かねーよ。直人…お大事に…。」
そう言って、手をひらひらと動かし事務所を出て行く柄沢。
扉が閉まり、柄沢の姿が完全に消え去ったのを確認できると…
俺は深く息を吐き出し、ズルズルとその場に座り込んだ。
視線を上げれば、カレンダーが見える。
そして…俺は理解した。
もうすぐ…10月がやってくる…。
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