181人が本棚に入れています
本棚に追加
彼方は…腹を満たして満足した猛禽類の顔をしていた。
この獰猛な獣は飢えた眼差しで、恐らく…直人を喰らい尽くしたんだ。
だけどね、君…大事なこと忘れてない?
「直人はどうしたのさ?」
この空間に直人がいない。
服が散らばっていたところから外に出たとは思えないし…この家のどこかにいるのは確かだと思うけど…。
彼方がバツが悪そうに一つの扉を見て、一言。
「閉じこもった…。」
「はぁ…馬鹿じゃないの?マジで何やってんの!」
彼方の頭を渾身の力で殴りつけ、僕は開かずの扉にすがりついた。
トントントン…
出来うる限りの優しい声で囁きかける。
「直人…僕だよ…。久遠。ゴメンね帰るの遅くなって。」
語りかけながら、オートロックの解除コードを入力する。
「ねぇ、直人…。僕は貴方に素敵なプレゼントを用意したんだよ。きっと喜んでもらえるって信じてるんだ。」
ピピピッ
開いた。
僕は素早く扉を開け、体を滑り込ませる。
脱衣室で僕が見たのは…
真っ白なタオルを頭からかぶり、自分の両腕で必死に体を抱きしめ
小さくなって震える直人の姿だった。
最初のコメントを投稿しよう!