dolcissimo

3/11
前へ
/116ページ
次へ
彼方は…腹を満たして満足した猛禽類の顔をしていた。 この獰猛な獣は飢えた眼差しで、恐らく…直人を喰らい尽くしたんだ。 だけどね、君…大事なこと忘れてない? 「直人はどうしたのさ?」 この空間に直人がいない。 服が散らばっていたところから外に出たとは思えないし…この家のどこかにいるのは確かだと思うけど…。 彼方がバツが悪そうに一つの扉を見て、一言。 「閉じこもった…。」 「はぁ…馬鹿じゃないの?マジで何やってんの!」 彼方の頭を渾身の力で殴りつけ、僕は開かずの扉にすがりついた。 トントントン… 出来うる限りの優しい声で囁きかける。 「直人…僕だよ…。久遠。ゴメンね帰るの遅くなって。」 語りかけながら、オートロックの解除コードを入力する。 「ねぇ、直人…。僕は貴方に素敵なプレゼントを用意したんだよ。きっと喜んでもらえるって信じてるんだ。」 ピピピッ 開いた。 僕は素早く扉を開け、体を滑り込ませる。 脱衣室で僕が見たのは… 真っ白なタオルを頭からかぶり、自分の両腕で必死に体を抱きしめ 小さくなって震える直人の姿だった。 image=492559249.jpg
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

181人が本棚に入れています
本棚に追加