calcando

7/13
前へ
/116ページ
次へ
「誰?」 俺の問いかけに、久遠は…んもうっと呟いて、 「知らないの?本当に?やばいよ、ヤバイって直人…。」 久遠は、少し慌てながら…ふっと思いついたように、俺を見た。 「熱が大丈夫なら、観てみる?」 「いいのか!」 俺は、飛びついた。 久遠は微笑んで、その代わりと自分の膝をポンポンと叩き 「頭はここにのせてね。少しでも身体が楽な体制にして。」 それが条件だよ…と久遠は囁いた。 久遠が観せてくれた、DVDは… 若く、美しい王女が、伝統と規律に守られた世界を嫌がり… 逃げ出してしまう話だった。 ローマという街で…新聞記者と恋に落ち… 別れてしまう。 だと言うのに、1番思い出に残る場所はーローマだと誰よりも美しい笑顔で答えた。 どうして…この王女は笑えるのだろう…。 花がほころぶように美しく。 「解っていたんだよ、この二人は。生きる世界が違うことを。」 そう言って俺の頭を撫でる。 決して自分たちの道は交わらないと解っていて、恋に落ちたんだ。 いつか… 素敵な恋をしたんだと…笑って話せる未来を信じて別れたんだと… 僕は、思っている。 そう…俺に囁いた。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

181人が本棚に入れています
本棚に追加