第1章

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「O Danny boy, the pipes, the pipes are calling」 それはとても美しい音色。 「From glen to glen and down the mountainside」 弦楽器のように美しく。 「The summer's gone and all the roses falling」 打楽器のように力強く。 「'Tis you, 'tis you must go and I must bide」 彼女は歌い続ける。 「やあやあ元気にしてるかい★」 はずだった。 「そんな悲しい歌は君に全く似合わないよ★ 女の子はもーーーーーーっと元気に歌わないと勿体無いよ★」 突然、彼女の目の前に目がカラフルでラフな格好をした青年が現れた。 「だれ?」 「ボクかい!?★ ボクは願いを叶えるとこができる神様だよ★」 瞬間、彼女の髪が青年を威嚇するように逆立った。 「神などこの世に存在しない。それは絶対であり真理であり不変のことだ。そしてなにより」 私の知らないことなど、この世に存在しない。 「おおおっととと!?★ 何もそこまで怒らなくてもいいだろ★ 嘘はついてないよ、ボクは神様さ★ この世界の、じゃないけどね★」 ケラケラと笑いながら積まれた本の上に腰を下ろした。 「あんまり時間がないから単刀直入に言うけど、君さ、ボクの世界にこない?★」 「お前に何のメリットがある」 「質問したのはボクだよ★」 「答えろ」 「質問したのはボクだよ★」 「答えろ」 「質問したのはボクだよ★」 「...」 「...」 沈黙。 「わかった」 先に口を開いたのは彼女だった。 「この世界ではもうこれ以上の知識は得られない。いいだろう、連れて行け」 スッと立ち上がり部屋の中央にある机に向かって歩き出した。 「私に名前はない。ただ彼は私のことをリヒトと呼んでいた。だから今から私はリヒトでお前も私をリヒトと呼べ」 「りょうかーい!★ でもあっちではボクは一切干渉しないし、一切干渉されないから意味ないと思うけどね★ リヒトちゃん★」 「...お前がいうあっちの世界とは一体どんな世界なんだ?」 リヒトは机の上に置かれている古ぼけた一冊の本を髪で優しく包み込みながら問うた。
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