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リヒトがいる世界から姿を消した二人は、祭囃子をBGMに、どれほどあるか分からない鳥居をくぐり抜けていた。
鳥居の隙間から見える景色は、なんともまあ幻想的な風景で青年は「落ち着くよね★ やっぱりあの世界のあの国のあの景色は本当に美しいよ★ だからパクった★」と嬉しそうに語っていた。
もっとも目隠しをされているリヒトにはどんな景色なのかさっぱり分からないので、ただただ青年の後をついて行くだけなのだが。
「まだまだ時間はあるから少しお話しようかリヒトちゃん★」
青年は振り向かずに、リヒトの同意を得ずに唐突に質問し始めた。
「まず最初の質問だよ★ リヒトちゃんの髪ってどうなってるの?★ あっ、歩きながらでいいよ★」
「これか」
ふわりとアメジストカラーの艶やかな髪が広がったかと思うと、腕となり、手となり、刀となり、様々な形を取り始め、最後には龍と形を変えた。
「これは私が唯一復元に成功した失われた技術で、ナノマシンというものだ。便利なものだぞ。栄養を摂取する必要もないし、一睡もする必要もない」
「性欲は?★」
「女にしてやろうか?」
「おっと、これは失礼しました★」
ヘラヘラと笑っているが、心なしか内股気味なのは気のせいだろうか。
「説明するとキリがないが、ナノマシンのおかげで私は不老不死になった」
「ボクが言うのもなんだけど退屈しない?★」
「全く。むしろ長く生きているほうが知識を得ることができて最高だ。もっともあの世界にはもう私の知らないことは絶対に出てこないから、退屈していたところではある」
「思ったんだけどさ、リヒトちゃんはなんで龍を知っているの?★ あの世界には龍は存在しないはずじゃなかった?★」
「彼が持ってきてくれた本の中にいた。流石に火は吐けないが噛みつくことぐらいはできるぞ。がおー」
ガチン!
「ちょっ、股に噛みつきにこないで!★」
ガチン!
「リヒトちゃんもしかして根に持つタイプ!?★」
「ナノマシンの調子が悪い。おそらくだが、この世界には存在しないはずのものだから世界が存在を拒否しているんだろう。どうにかしろ」
「リヒトちゃん絶対嘘でしょぉぉぉぉ!!★」
紅葉が散り満開の桜に雪が降る山の麓から頂上まで、何百本あるのか分からない朱色の鳥居から神様の叫び声が世界に響き渡った。
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