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あった部屋から響き渡る、特大目覚ましの音に辟易しながら私は合い鍵を取り出す。このハンマーを数十個、集めたかのような爆音の中でも爆睡できる奴がいるのかと疑いたくなるけれど、いるのだ。
居なければ、毎日、こんな爆音に悩まされていない。慣れた手つきで鍵を開けて遠慮なく廊下を進み、特大目覚ましをドンッと叩いて止める。いっそこと壊してしまいたいたくなる衝動を抑えながら、ベッドに寝転がる芋虫から毛布を剥ぎ取る。
「わぁー追い剥ぎだぁー」
毛布をはぎ取られた芋虫こと、少年が眠そうにフニャフニャと緩い笑みを浮かべながらウーンと背筋を伸ばす。
「誰が追い剥ぎよ。全く、君はいつになったら一人で起きられるようになるの?」
彼の名前は志麻雄太郎(シマ、ユウタロウ)大学生、一人暮らしなのにいっさきの家事ができない困った子だと言うか、放置しておくといつまでも寝ているような子だ。この子と知り合ってかなりの月日が流れているけれど、これといった進歩が見られない。
「わぁ、湯川さんってうちの母さんと同じことを言うんだよね。ご飯は?」
「私は貴方のお母さんじゃないから、ご飯は……」
「えーーーっ、ないの?」
「家に用意してあるから、顔を洗ったら来なさい」
「はーい、やったー」
はぁとため息をつきながら戻る。彼に進歩がないのは私にも原因がある。あのユルユルとした態度を見ているとどうにかしてあげなくちゃって気持ちになってしまう。保護欲というか、この子は一人にしたら死んでしまうと心配する気持ちがついつい甘やかしてしまうのだ。
大学生なのに子供のように性格が温厚というか、まんま子供だ。朝は起きられないし、こっちから世話をしてあげないと何もしようとしないしで、とんだ困ったさんだ。
「わぁ、いただきまーす」
とこの無邪気に笑う笑顔を見せられれば、まぁ、悪くないかもと思うが
「あのね。志麻くん。君には彼女がいるんだから誤解されるようなことするべきじゃないと思うんだけど?」
志麻くんには彼女がいる。会ったことはないけれど、こういうのはマズい。
「んー。この前、別れたから問題ないよ?」
「わ、別れたっ!?」
わ、別れたってことはつまり、喧嘩でもしたから、なのにこの子ときたらあっさりしている。呑気に味噌汁をすすってる場合でもないだろう。喧嘩したのなら仲直りさせなければ、私が原因だとするならなおさらだ。うん
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