7人が本棚に入れています
本棚に追加
~~~~
その後、香織さんと憲一さんに頼んで、その子と二人きりにさせて貰った。
この子がどんな子なのか知りたいので、親のいないところで、話をしてみたかったのだ。
「えーっと、あんじゅちゃん?」
私がそう聞くと、彼女はうん、と大きく頷いた。
「今・・・いくつ?三年生?四年生?」
「・・・あたし、来年、小学生になるの!」
そう元気に答えたものだから、私はびっくりしてその子を見つめた。
「小学生??」
背が高く、身体も大きい杏樹・・・てっきりもっと年上だと思った。
「うん!今度一年生なんだ!」
大きな、はきはきした声でそう答えた。その声や言葉は、この春小学生になるにしては、しっかりしているように思えた。
少なくとも、私が知っているどの小学生とも違うような気がした。
「そっか・・・
ランドセルとか、もう買って貰ったの?」
とりあえず、ピアノとは関係のない話をしてみると、杏樹は目をきらきらさせて頷いた。
「うん!
この前、おじいちゃんとおばあちゃんが、ショッピングモールで買ってくれたんだ!
ピンク色にね、白い線の入っててね、横にお花の刺繍がしてあるの!
それでね・・・」
杏樹は、ランドセルの話を続けた。どうやらよっぽど嬉しかったらしく、手振り身振りを添えて話を続けた。
秋にランドセルを買いに行ったけど、その日は買えず、注文になった事。その注文したランドセルが先日出来上がり、取りに行ったら幼稚園のお友達と偶然会った事、そして、そのお友達全く同じ色だったこと・・・
ランドセルを買った後、フードコートでみんなでアイスクリームを食べたこと、それは、目の前でアイスとフルーツを混ぜて作ってくれるアイスで、苺が一杯入った、見たこともない程きれいなピンク色のアイスクリームだったこと、それがどれだけ楽しかったか・・・
「それでね・・・そのランドセルはね・・」
矢継ぎ早に話を続ける彼女に私は閉口した。それでも話そうとする杏樹の話に、私はなすすべもなく、ただ付き合い続けた。
最初のコメントを投稿しよう!