第1話 失恋と決意

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「あの……、千佳ちゃん」 激しい自己嫌悪の渦に飲まれるわたしの頭の上に、不意に新しい声が加わった。 顔を伏せてても、空気が変わったのが一瞬で分かった。 来た。 とっさに浮かんだのは、その二文字だった。 「朝から元気ないみたいだけど、大丈夫?」 心配そうで優しそうな声が、立て続けに矢みたいに降り注いでくる。 「もし良かったら、これ。さっき購買で買ってきたんだけど、」 ガサガサと、その人物がビニール袋を漁る音が聞こえて。 「千佳ちゃん、飴好き?良かったらこれ、一個どうぞ」 コトリと、机の端になにか硬いものが置かれる音が耳の奥に響いた。 「千佳ちゃんいっつも笑ってるから、どうしたのかなって心配で、」 気遣いに溢れているはずの言葉が、わたしにとってはナイフみたいに鋭く思えた。 「余計なお節介かもしれないけど、」 止めて。 「飴くらいしかあげるものなくて、」 止めてくれ。 「ごめんね?」 …………謝るな。 叫び出しそうになって、ひゅっと息を吸ったと同時に、 ガンッと鈍い音が響き渡った。 教室が、一気にシンと静まり返る。
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