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顔を伏せているわたしでさえ、びくっと肩を震わせたほどの音を立てたのは、案の定隣の席の問題児で。
「ごちゃごちゃうるせぇな」
西の凄んだ、低い声が教室に響き渡った。
多分、ていうか絶対、アウト。
「ちょっとニシっ、」
「お前みてーなイイ子ちゃん、胸糞わりぃんだよ」
慌てたように声を潜ませた飛鳥の制止を諸共せずに、西は乱暴に吐き捨てるとガタっと音を立てて椅子から立ち上がる。
「おめーもうぜぇんだよ。いつまでも隣で泣いてんじゃねぇよ」
ガタンッと、さっきよりも強めにわたしの椅子の脚を蹴った西の言葉は、まっすぐにわたしへと向けられていた。
ざわつく教室。
遠ざかる足音。
次第にうるさくなっていく教室のざわめきの中を占めるのは、「サイテー」だの「怖すぎだろ」だの、西へのありきたりな非難。
「ちょっとチカぁー、大丈夫だったー?!酷すぎでしょ、西っ!有り得ないね!」
バタバタと何人かがわたしの机の周りに近寄ってきて、口々に慰めの言葉をかけてくる。
「ていうか優実にもあんなこと言って、人として間違ってるっしょ?!」
「優実ちゃん、大丈夫かぁー?」
「優実ほら、泣かないの!」
「びっくりしたよねー、もう」
「うん、ごめんね」と嗚咽混じりに謝る佐野さんの言葉をぼんやりと聞いているわたしの頭を、クラスメイトの誰かが撫でた。
わたしは、頭を撫でられるのが好きじゃないのに。
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