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「俺、彼女できた」
「…………は?」
口から出たのは、自分でもびっくりするくらい間抜けな声だった。
信じられない言葉(というよりも信じたくない言葉)に、持っていたフルーツオレのパックがぽとりと落ちる。
人二人分のスペースをあけて、音楽を聴いているその横顔をじっと見つめると、
「……なに?」
涼しげな表情でこちらに視線を向ける先輩が、あまりにも普通だったから、やっぱり聞き間違いなんだと思い直した。
そうだ、そうだった。
先輩に、彼女なんかできるわけない。
「い、いやぁ、なんか聞き間違えちゃったからびっくりしちゃって!アハハ」
聞き間違えた挙げ句、典型的すぎる反応をしてしまったことが少し恥ずかしくて、笑いながら誤魔化してフルーツオレのパックを拾った。
……少し、溢れてる。
あー、残り少なかったのにと思いながら、屋上独特の緑色の地面に零れた黄色の液体をどうしようか悩んでいるわたしの耳に。
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