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「……ちょっ、チカぁ」
「……はぁぁぁぁ、めんどくさっ」
バッと机に顔を伏せた私の頭上から、珍しく困り果てた飛鳥の声と、心底ウザったいというような西の声が降ってきた。
わたしの涙腺は、どうやら一晩中泣き通したくらいじゃ締まらないらしい。
所構わず、壊れた蛇口のようにボロボロと水分を排出していく自分の涙腺を、恨めしく思った。
「チカ、今日パフェ奢ったげる!前に食べたいって言ってた、駅前のカフェの新作!」
「失恋太りとか洒落になんねー」
「ニシっ!あんたも少しは優しい言葉かけらんないのっ?!慰められないんならせめて黙ってなさいよ無神経男!!」
「朝慰めてやっただろうが」
「『ドンマイ』の四文字で慰めたとか口下手にもほどがあんでしょうが!!」
「こいつが失恋しようがしったこっちゃねーんだよ、ピーピーピーピー泣きやがって」
「……ツンデレもここまで来ると殺意湧くわね」
頭上で繰り広げられる攻防戦は、ずぴぃぃぃっとわたしが大きく鼻をすすった音でピタリと止んだ。
「……そんなに好きだったのか、こいつ」
「だって、五年間の片想いだもん」
「ねぇ?チカ」って聞いてくる飛鳥の声があまりにも優しかったから、また余計に涙が止まらなくなった。
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