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「いつも何を見ているの?」
その質問にも異様なほど腹が立った
まるで私が観察されているようだ
「関係ある?」
わざと突き放した
なのに……
「もう……夏なんだね」
何、当たり前の事を言っているのだろうか?
暦の上でもとっくに夏だし、この暑さ
セミの鳴き声が耳に触る
それなのに「ようやく夏が来た」とでも言いたげな彼の口調
どうかしている
やはり、この転校生はどこか違うんだ
自己紹介だって、名前くらいしか言わなかった
どこから転校してきたのだとか、そんな事は一言も触れなかった
だから、私も触れなかった
だけど、だけど……それも終わりにしよう
そう思った矢先だった
「牧!?」
クラスの入り口で転校生の名前を呼んだ生徒がいた
学年一、いや。
学校一有名な生徒
【渡 晃(わたり あきら)】だ
私とは幼馴染
とは言え、家は離れていて、彼もまた転校生
牧くんとの違いは 絵に描いたような転校生 である事
「渡くん?」
瞬間、クラスがざわついた
あの転校生が口を開いた
それも、渡と知り合い風を吹かしている
「久しぶり!!何だよ!転校生ってお前かぁ……。なら、さっさと見に来れば良かったよ」
「渡くんこそ、元気そう」
牧くんが、いきいきとしている
初めて見る姿だ
自分のクラスではけして見せなかった笑顔を渡にはいとも簡単に見せてしまった
それが少しだけ許せなかったんだと思う
「バカじゃないの?」
つい、小声に出してしまった
後悔先に立たず
言いお 終えた後にはクラス中の視線を集めてしまっていて、今更弁解する気にもなれず
まして、言葉を引っ込める。何て事も到底出来る筈もなく
それでも、牧くんは怒る事もなく、ただただ私を見ていた
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