第1章

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「明希?どうかした!?こいつ、何かした?」 渡が私に問いただす 牧くんと知り合いなら尚更のこと 「何もしてないよ」 意外にも口を開いたのは牧くんだった 「え?」 私も当然の反応である 何故、私が庇われる立場なのか 「僕が真倉さんを見てただけ」 告白とも取れるその台詞を牧くんは簡単に言ってのけた 私は言葉が出ず、その場から動けなくなってしまった やがて牧くんは渡の手を取り 「実は話したい事があったんだ」と 爆弾を落とすだけ落として、半ば無理やり渡の手を引き、教室を後にしてしまった 当然、その後の視線も話題も私に集まる 分かっていた結果だ 「何?どうなってんの?」 「告白だったの?今のって」 「転校生って喋らないと思ってた」 居なくなった途端、こうだ 直接本人に聞けばいいのに 何故人は周りを気にして、第三者から情報を求めるのだろうか おそらく、それは人間の心理的なもので ワクワクしたい だとか 話題性のある何か を求める習性があり、まさにその話題が牧くんと私なのだ 例え、私と牧くんが全く関係がなく、話をした事がないと知っていても騒ぐ 騒いで、噂を作り、日々の会話へと繋げたがる そんな女社会が大嫌いな私は群れる事が嫌いな点で言うならば、そこだけは牧くんとの共通点とも言える 私はすっかり騒がしくなってしまった教室を後にする為、立ち上がり保健室に向かうふりをした 小慣れたものである こういう演技ほど、自然と身に付いてしまうものだから笑える 私は階段を駆け上がり、屋上へと出た そこには思惑通り、転校生と渡がいた
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