第1章

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夜。 ほぼ盛り上げ役に徹した合コン。 あたしは二次会も誘われたけど行かず、マスターのお店に向かった。 別に合コンが楽しくなかったわけじゃない。 ただ、もう一度瑛二くんに会いたいと思った。 偶然会えれば、連絡先教えてくれるって言ってたし。 カラン。 「いらっしゃい。」 マスターがあたしに微笑んだ。 カウンターを見ると、お客さんは一組だけ。 その一組と、席を3つ空けて椅子に座った。 「マルガリータ頂戴。」 「了解。」 手際よくカクテルを作るマスター。 それをぼーっと見つめるあたし。 「…珍しいね、綾ちゃんが昨日の今日でここに来るなんて。」 ドキリ。 「んー…まぁ…。」 もしかしたら、瑛二くんがここに…なんて言えない。 でも言葉を濁すと、尚更怪しいのに。 「はい、お待たせ。」 何事もなくマスターはコースターにカクテルを置いた。 「ありがと。」 一口飲んで、今日の疲れを癒す。 咲哉のことを考えないようにと合コンまで言ったのに。 ただ、疲れただけ。 意地を張るだけ無駄なのかも。 わかってるのに。 素直になれない。
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