第1章

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腕時計を見ると、午後10時。 昨日は何時くらいにここに来たっけ…。 瑛二くんに会いたい。 あの冴えない顔をした彼に、その理由を聞いたり、話をしたい。 っていうか……今は誰でもいいから側にいてほしい。 「やっぱり瑛二待ってる?」 ニヤニヤするマスターに、 「……誰でもいいのかも。」 なんて、はしたない発言をする28歳。 我ながら最低。 「綾ちゃん、自分を大事にしないと。」 「ふふ。冗談。」 誰でもいいんじゃなくて、咲哉の代わりが欲しいだけ。 いや、本当は咲哉が欲しいだけ。 でもそれが出来ないから、もどかしい。 奥さんと別れてとか、言えない。 「ま、昨日の瑛二の一言が効いてるんだろうけど、そんな顔しないで! 今までの綾ちゃんなら強気でいられたハズでしょ? あ、それともあのイイ男に言われるとさすがに参ったー?」 からかうマスター。 いや、それ…冗談になってない。 「まぁね~。あたしもたまには傷付くよ?」 って、返事をしてみる。 「あはは!」 楽しそうに笑うマスター。 マスターのこういうところ、尊敬する。 あたしが本気で言ってないのもわかってる。 「でもさ、さっき来たよ?彼氏。」 ………え。
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