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しばらくして、瑛二くんはゆっくりとあたしに顔を向け、男らしい瞳であたしを見つめた。
…ドキン……。
胸が少し高鳴ったところで、瑛二くんがあたしの痛いところを突き始める。
「…綾さんの恋の終着点はどこ?」
ドクン……。
忙しい、あたしの心臓。
いや、踏ん切りつけたし!
考えても仕方がないことだし!
そう思ってる。
そう思ってる……ハズ。
「奥さんから奪うこと?」
それが出来るのなら、終着点はそこだろう。
でも出来ない。
最初から咲哉には家庭があるってわかってて好きになったのはこのあたしだから、そんな資格ない。
「ずっと迷路に迷い込んだままでいいんだ?」
その言葉とともに、瑛二くんの視線が痛い。
マスターも、あたしのほうを見ている。
「あたしは……彼の家庭を壊せない。
ただ好きなだけでいい。
彼から別れを告げられたら、それでいいのよ。
今は都合のいい女でも、彼の側にいたいから。」
我ながら、悲劇のヒロイン。
綺麗事の塊。
大人ぶって平気なフリする自分にヘドが出そう。
そして、無理矢理踏ん切りをつけようとしている自分に嫌でも気付いてしまう。
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