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嫌な顔をする彼。
あたしは構わず何か話そうとしたら、
「……ぷっ。」
マスターが、笑いながらカクテルをコースターに置いた。
そこからマスターの冗談に笑わされ、あたしは心の中にあるモヤモヤが少しだけ取れた気がした。
それなのに。
「綾ちゃん、今日彼は?」
なんてマスターが聞くから、咲哉のことを思い出した。
『奥さんが熱出したから会えなくなった。』
…咲哉なんか、もう知らない。
「ん?奥さんのとこ。」
って、自分の中にある悔しさに気づかないふりをしてサラッとマスターに言った。
一つ席を空けて座っている彼を見ると……あたしの言葉に嫌悪を示す顔。
意外だった。
その風貌からは、不倫というものも軽く受け流す感じに見えるのに。
「やめてくれる?そーゆー顔するの。」
マイナスな自分をどこかに追いやり、余裕な顔で彼を見る。
「………。」
黙ったままの彼に、あたしは続けた。
「ま、22歳にはまだわからないか。
何も壁のない恋愛しかしたことないだろうし?」
なんて、出会ったばかりの彼に絡むあたし。
どんな反応が返ってくるんだろう。
『色々あるんだね』とか、『大変そうだね』とか?
そして彼はあたしを見た。
…軽蔑の眼差しで。
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