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「別にいいんじゃない?あなたがそれでよければ。
ハッピーエンドなんかいらないんだろ?
そばにいられればいいから~とかキレイ言並べて、本当は悲劇のヒロイン的な自分が好きなだけだろ。」
彼が言い放ったその言葉は、さっきまで咲哉なんかって強がっていたあたしの心を見事に打ち砕いた。
鼻の奥がツンとする。
や、ダメ。
そんな、今ここで泣くなんてかっこ悪……。
ボロッ……。
「しょうがないじゃない…っ…諦められないんだからっ……。」
涙と一緒に本音が飛び出した。
奥さんを優先する咲哉に腹を立てる筋合いなんかない。
…わかってる。
キレイ言を並べていたのは最初だけ。
今は単なる悲劇のヒロイン。
そんな自分が好きだなんて思っていない。
咲哉はお見合いだし、婚姻届という紙切れ1枚で繋がっている夫婦なだけ。
それでも人の物に手を出すことは許されない。
どんなに泣いて願っても、あたしは咲哉と一緒になることはない。
被害者は奥さん。
あたしは悲劇のヒロインにすらなれない。
同じ土俵に立とうなんてお門違いもいいところ。
わかっているのに。
涙が次々と溢れた。
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