視力の問題

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感動ものの映画を見て思わず泣いてしまった日、私の世界はこんなふうに見えていた。 ガラス製のコップが凸凹に見え、カーテンは繊維レベルで視認でき、人に関しては・・・いや、人だけではなく世界が見たくなくなるレベルで見えてしまう。 なので大体今は涙を流すときは雫に目隠しをしてもらっている、ある一定の時間が経つまで・・・じっと。 雫は目隠しをしている間も一定の時間ごとに「大丈夫ですか、姉さん」と声をかけてきてくれる、大きなことではないけれど、とても心が落ち着いたりもする。 この、見たくもない綺麗で、幻想的で、汚れている世界の中で。 「姉さん、時間です」 土曜日、視力の調整が終わった。 「姉さん?」 「もう少し、このまま」 「・・・」 雫はしばらくの間ゆっくりと頭を撫でてくれていた。少しくすぐったかったけど、それはとても暖かい手だった。 「雫、いつもありがとう」 雫は無表情のままだったが 「かまいませんよ、姉さん」 と返してくれた。
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