邂逅

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目を覚ました少年は、自分の顔を舐めている子猫に気付いたようだ。困ったように子猫を退かそうとしている。 「…あ、あの…貴方、大丈夫?」 少年に、少女は恐る恐る話し掛ける。緊張し過ぎて、声が震えてしまった。 すると、子猫を見ていた少年が、こちらに気付く。 「…っ!?」 少年はいきなり飛び起きて、少女から離れた。 驚いたにしては、過剰な反応に、少女も唖然としてしまう。 「そ、そんなに急に動いたら、危ないわ!貴方倒れていたのよ?」 少女の言葉に、少年は慌てて回りを見回す。 その顔は、驚きと戸惑いと、そして怯えで強張っている。 そんな少年に、子猫が擦り寄る。 「…その子猫も、貴方のこと心配しているみたいよ?」 「ニャアー」 まるで少女の言葉に同意するように子猫が鳴く。 「ほらね?」 少女は少年を安心させようと、明るく笑いかける。 本当はすぐにでも、人を呼ばなければならないのは分かっている。だが、何故だかこの少年と、話をしてみたいと思った。
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