36人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
「……減少は、相変わらずか?」
「…はい。東の海に近い森では、半数以上が枯死してしまったようです」
「そうか。尾久呂(おくろ)の国はますます兵を集めているようだ。特に海域での目撃が報告されている。…やはり東から結界が弱まっているのだな」
ここ数年、何故か国中の鳴花の木が枯死し始めたのだ。当然、国の結界も弱体化が始まった。
そして尾久呂の国は、それを見逃すような隣国ではなかった。
このまま鳴花の木の減少が続けば、そして天鳴樹までも枯死するようなことがあれば、結界は崩壊する。
そして結界を失えば、待っているのは隣国による侵略だ。
いくら強力な能力者が揃っているとはいえ、それも鳴花の木があってこそ。尾久呂の圧倒的な武力と国力の前では、いずれ霊力が尽きてしまう。
天里の国は、滅亡の危機に瀕していた。
もちろん、ただ黙って滅びるのを待つつもりはない。何とか状況の打破を図ろうと、鳴花の木の枯死の原因を探らせた。
枯死の理由は、花がつかなくなったことによる、霊力の溜め込み過ぎだった。花によって、木の霊力は一定に保たれていたのだ。
しかしどうすれば花がつくのか、肝心の解決策が見付からない。
楼院に所属する能力者総出で、溜まった霊力を減らそうと試みたが、焼け石に水だった。
最初のコメントを投稿しよう!