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――――……‥
少女が一人、森の中を歩いている。
ゆっくりとした足取りで、辺りを興味深そうに眺めていた。
少女は薄い栗色の長い髪を一部だけ結わえ、後はそのまま下ろしている。
風が通り抜ける度に、気持ち良さそうに細める瞳は、澄んだ青空と同じ色だ。
ふと、少女の足が止まる。
不思議そうに回りを見回し、そして向きを変えて、木々の奥へ進み出した。
緩い斜面を降りた先に、小さな川がある。少女は川のほとりに立つと、弾かれたように駆け出した。
少女の向かった場所には、なんと一人の少年が、倒れていた。
駆け寄った少女は、倒れている少年を覗き込む。気を失っているが、怪我などは無さそうだ。
年頃は少女と同じ位だろうか。少女の心臓はうるさく騒いでいた。走ったせいばかりではない。
生まれて初めて、同世代の異性を、しかもこんな間近で目にしたのだ。まじまじと見詰めてしまう。
やや長い黒髪がかかっていて、顔はよく見えない。瞳も固く閉ざされているが、割りと整った顔立ちのように思える。
(……男の子って、肌キレイなんだ…)
川のほとりだが、その体はどこも濡れていない。不思議に思いながら、少女は恐る恐る手を伸ばす。
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