5人が本棚に入れています
本棚に追加
何の構えもとる気配のないオルカに、男、勇者スペリオールが斬りかかった。基本の型をしっかりと踏まえた、スタンダードだが悪くない一太刀。しかしオルカはそれをその身に浴びることなく、ひらりと後ろへ身を躱す。
「よく斬れそうな刃だぬーおー怖い怖いwww」
「いつまでもそう鬱陶しく笑ってられると思うなよ……!」
そして、連撃。しかしオルカはあの笑みを浮かべたまま、反撃に転じる気配はない。ただひたすらにそれを後ろへと躱し続ける。武器すら、その手に持たずに。
「ああもう、武器も出さねぇで……!お前、食らうか反撃に出るかしやがれ!イラつくんだよ!!」
「だが断るw俺は勇者を迎え撃つ魔王だぜ?ww武器を出せとか言われて従う義理なんてないねwww」
「一々癇に障る……!今の言葉、後悔させてやる!」
何度目かの空振りの後、スペリオールは一旦後方へと飛び退った。そして剣を構え直し、オルカへしっかりと狙いを定める。
「プロクス・ライノ!」
剣に、鎧に炎を纏う魔法。見た目にはそれほどのものには見えないが、炎の揺らめきの歪さを見るとどうやら非常に高密度の炎であるらしい。きっと触れただけで人体をも溶かす程。勿論まともに食らっては一溜まりもないであろう。迫られる前に、とオルカは再び逃れんとする。
「逃がすか!プロクス・ウォール!」
しかしそれは炎の壁に阻まれた。オルカの両脇を取り囲む炎の壁。後ろへ逃れようにも、先程から後ろへと身を躱し続けたせいで十歩も行かない程の距離に部屋の壁が存在している。まさに袋の鼠。しかしそんな状況で尚、オルカはケラケラと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!