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モニターの隣にあるタブレットを取り、ソルティドッグを頼んだ。
このまま今日は飲むだけでもいいや……
ほとんど氷と水になったジントニックを舐めながら、モニターをぼーっと眺め続けていた。
『スターカラオケ☆オーディション企画第1弾!
今回初のオーディション企画のプロデューサーはァーーー?
”ミロク” ーー!!!』
ミロクと言えば、SUDOKUという人気ロックバンドのフロントマンだ。彼らは海外デビュー後に逆輸入の形で日本デビューし、2000年代前後のロックの黄金期を引きずるアラフォーたちを中心に人気を集めていて、聴いた感じが完全に洋楽だと思うようなテイストがウケているようだ。
また、そこそこの人気がありながら、『ライブハウス級のハコでしか演らない』というバンドのポリシーがあり、観客との距離の近さが人気のポイントにもなっている。
色白で細身で中性的、ハーフっぽい出で立ちのミロクの虜になる若い女子も多く、MIROQUE名義でソロ活動をスタートしてから、女子の人気が一層熱狂的になった感じがする。
私も……その一人だと言える。
バンドの追っかけなんて絶対やらないけど、女の私が男の彼を憧れにも崇拝にも似た気持ちで眺めてるのもなんだかヘンなんだけど、ミロクを見かけるたびに女に生まれた自分が実に恨めしく、ミロクみたいな人生を送りたかったとおかしなことを考えてしまうのだった。
そのミロクが、女性ボーカリストを募集するという――
『えー…MIROQUEです。
今回、スターカラオケ☆オーディションの…なんと第一回目に、MIROQUEプロデュースということで、女性ボーカリストのオーディションをさせて頂くことになりました。
まだね、ジャンルとか、プロデュースするそのものの方針とかは特に定めていないので、そこは素材を見ながら育てていこうと考えています。
カラオケから応募できるとか、時代だなぁってつくづく思うね。カラオケが上手いだけのお利口さんは俺は要らないから、そのままの自分をぶつけて来て欲しい、というのが俺からのメッセージです。
では、詳しい応募方法は会員画面にログインして確認してください。応募、待ってます。MIROQUEでした――』
ドクン、と胸が鳴った。応募締め切りは今日まで、とあった。
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