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でもイヴの晩、俺は手を出さなかった。
ファミレスで飯食って
居酒屋行って酒飲んで
ヘラヘラ笑うおまわりさんから、名前と連絡先をゲットしただけに終わった。
――犬井誠(いぬいまこと)って言います。しょくぎょうはけいさつかんれす。
俺を一時停止で取り締まったくせに、名前を教えてよって言ったら、職業までご丁寧に呂律の怪しい状態で改めて言っちゃうような
そんな天然マコが可愛くて、その晩は食べるのをやめた。
俺の知り合いがそれを知ったら、白目になるほど驚くことなんだぞ。
手と警察からの逃げ足だけは速い俺が据え膳のままって
それがどんだけありえないことなのか、わかってんのか?
正月はこいつ、また、仕事押し付けられて会えなかったし。
んで、そのあと、会った時には連勤疲れでヘロヘロだったから、また何もせず。
つか、仕事押し付けられすぎなんだよ。
パワハラだろうがって言えよ。
警察官なんだから。
いまだに、キスすらしてないって、俺の人生初なんだぞ、こら。
「ちょ、離してくださいっ! ここ、公衆の面前ですよ!」
「別にハグくらいで捕まらねぇよ。裸で抱き合ってるわけでもないのに」
「! そ、そそそそんなの、あたりまえです!」
ハグ止まりってなんだよ。
脱童貞が中学ン時、ナンパしてきた女とその日のうちにっていう俺に、どんだけ足踏みさせる気だよ。
「それと! マコちゃんってやめてくださいって何度言ったら」
「じゃあ……マコ……なら文句ねぇ?」
「……」
そこで、腕の中からこっち見上げて頬を綺麗なピンク色にするって
なんだそれ。
「ちゃんって女の人じゃないんですから。でも、そ、それなら、まだ、はい……」
可愛い。
食べたい。
「マコ」
「は、い」
低く、少しだけ艶っぽく名前を呼ぶと、腕の中で、ヒクンと反応していて、それがまた小動物っぽい感じでたまんねぇ。
何度呼んでも、必ず反応する抱き心地最高のおまわりさん。
「マコ」
「はい」
「キスしようか」
「は……ダメです!」
ポーッとしてるから素直に返事しそうだったけど、そこはしっかりダメと宣言するマコが可愛くて、可愛くて
思わず、ぎゅっと力いっぱい抱き締めていた。
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