第2章 おまわりさん、歌います。

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「さて、今日はどこ行く?」 まだ、マコとは飯食って、その辺をブラつくくらいしかしていない。 まぁ、ドンくさいマコがテキパキ仕事を終わらせられるわけもなく、アホみたいに忙しいから、こうやって会うのはイヴの初回からまだ四回目。 でも、その四回でいまだにラブホに辿り着かないのは、知り合いに知られたら、かなりレアなことだ。 ホストは仕事として割り切っていたから、枕やらないけど プライベートでは普通に手は早いわけで。 「飯はまだ、腹空いてないだろ? マコは腹空くとすぐ腹さするから」 マコと呼ばれてまた頬を染めた。 そして、よく自分のことを知っているなと、素直に感動している。 そういうの得意なんだよ。 ホストん時だって、枕もアフターもしないで、ナンバーツーにまでなれたのは、そういう人間観察が上手かったからだ。それでなくてもマコは全部顔に出るし。 「またボウリングにするか?」 「あ、あの、拓海さんっていっつもどうしてそんなテキパキ動けるんです? 僕、いっつもすごいなぁって」 拓海でいいって言っても、俺のほうが年上だからと絶対にさんを付ける、少し邪魔なくらい律儀な性格。 「それにけっこう真面目ですよね」 「けっこうって、失礼だな」 「あっ! すみません」 いまだに敬語だし。 怒られたと勘違いして肩をすくめるマコの鼻をむんずと掴んでやったら、元からまん丸な目を更に大きくして慌てている。 自分の知り合いにはいない人種。 男でも、女だって こんなド天然でわたわたした小動物みたいに可愛いの 遭遇したことがない。 普通なら、イライラするかもしれない。 でもマコはそのギリギリのところで、それをクソ可愛く見せる。 「仕事はな。それで金もらってんだから」 「そ、そういうのすごい尊敬します」 尊敬か……別にそんなんいらねぇ。
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