第2章 おまわりさん、歌います。

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「拓海さんはすごいと思うんです!」 俺はそんなもん欲しくねぇって、イライラするだろうな これが違う奴相手だったら。 押し倒したくて仕方がない相手がまったくもってそっち方面に俺のことを考えていませんって言ってんだから。 「テキパキしてて、カッコいいし。……だから、その、さっきの女の人、だって、好きになるだろうなぁ、って」 イライラの線をギリ越えずに、逆に飛び込んで来るんだ。 俺の中に グンと入り込んで もっと夢中になれと首根っこを掴んで離そうとしない。 「別に誰に好かれたって意味ないだろ」 今、マコは俺との会話に集中していて、どこへ向かっているのかなんて考えてもいない。 しゃべりながら、このままラブホまで歩いていったら、入り口のところではたと気がついて慌てふためくだろう。 何考えてるんですかっ! とか、顔真っ赤にして怒りながら、もしかしたらジタバタしすぎて、石も何も転がっていない所で転ぶかもしれない。 「マコに好かれたいんだから」 「!」 ふわりと笑ってやると、一気に顔がトマトになる。 完熟の 甘い 甘い トマトみたいに 指で突付いたら、ツルッとしていて柔らかそうな。 そういや、このまえ、歌が苦手だって言ってたっけ。 カラオケ、もいいかもな。 絶対に困った顔すんだろ、マコのことだから。 歌えませんとか言って、目をうるうるにさせながら、ふたりしかいない部屋でどうしようかと本気で悩む。 あの晩、イヴに俺を夢中にさせた、衝動を駆り立てる顔。 あれ すっげぇ、見たい。
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