第2章 おまわりさん、歌います。

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「た、たたた拓海さんは、いっつも、そんなこと言いますけど」 「ほら、着いたぞ」 「へ?」 予想通り。 素直に俺に誘導されるまま歩いていたマコは、ピタリと歩を止めた俺の横に同じように立ち、指差した先の看板を見上げて 柔らかそうな唇を 大きく「お」の形にして固まった。 「カラオケ、行くぞ」 ひぇぇぇ、って顔をしたマコを強引に中へ連れ込むと、もつれそうな足で一瞬だけ抵抗を見せたものの、少し強く引けばあっという間にリードされていた。 「ぼ、僕、歌えませんって言ったじゃないですか!」 「でも、先輩達を接待する時に困るんだって言ってただろ? 何を歌えばいいのかわからないって」 「そ、そうですけど」 マコを機材のすぐ横に座らせて、唯一となる逃げ道に俺が座る。 まぁ、小さなテーブルを跨げば逃げ出せないわけじゃないが、今のマコにそんなことは思い浮かばないんだろ。 ぎゅっと身体の側面をくっつけると「ひゃん」なんて可愛い声を上げて身体を縮めてる。 先輩に一曲歌えと言われるのが苦で、飲み会の二次がカラオケになりそうな時は必死にボーリングか、別の居酒屋を探してるって 溜め息混じりに話していた。 つまり、毎回、幹事をやらされているわけだ。 「こういう時は一曲、パッと歌えばいいんだよ」 「な、なるほど、たとえば?」 メモでも取りそうな勢いだな。 「そうだなぁー、あ、これは?」 「? ……こ、これ、女性の歌ですよ! しかもアニメの!」 「ウケ狙いでこういうの歌えば、下手でもかまわないし、ノリ良いし、皆知ってる歌だから、誰かしら乗り込んで一緒に歌ってくれるって」 指差した先にあるのは、ずいぶん前にカバーされた昔のアニメの主題歌だ。俺が個人的に少しやらしい歌詞をマコが困った顔でうたう姿が見たいだけなんだけど。 「歌ってみ?」 お尻、とか、マコが涙ぐみながら言ったら、相当クルだろ。 そんな邪な考えから勧められていると知るわけがないマコは恐る恐るマイクを手にする。  
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