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「よく戻ってきてくださいました。この度の機械国への遠征は如何でしたか?」
「交流を兼ねて共同訓練、模擬試合を行いました。機械国の技術には関心するばかりです。今度魔導隊も含めた遠征も勧められました」
「怪我はありませんでした? 慣れない土地に不便はありませんでした?」
「いえ、特には」
「そう……ところで、あの、久し振りなのですから、名前で呼んでください」
「リリアンナ様」
「もう……」
リリアンナは不満気に口を尖らせ、小さくため息をついた。他の団員が見ていたことに気づくと、アーロンの耳元でその艶やかな唇で囁いた。
「あとで部屋へ伺います」
絹のような髪を揺らすリリアンナの後ろ姿を認め、アーロンも踵を返した。
「? 何か用か?」
距離を空けてアーロンを見つめる団員たちに、アーロンは不思議そうに首を傾げる。
「いえ、あの……」
「前々から思っていたんスが、アーロンさんと姫様ってどういう関係なんスか!?」
「お、おい」
一人が元気よく手を上げて尋ねる。
「だって気になるじゃないスか! 姫様はえらくプライドが高くて自分が認めた人間以外側に近寄らせないって有名ですよね。今まで断った縁談は数知れず! 泣いて帰った貴族の子息も星の数だとか」
よく見ればまだ幼い顔立ちをした少年ともいえる団員だ。興奮収まりきらないといった様子で捲し立てる彼に、アーロンは淡々と答えた。
「ピーナッツを分けた仲だ」
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