Dissonance

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***  ガチャリガチャリと、一定ではあるが、あまりにも重々しい音。これから王への謁見のため、正装でなければならない。"騎士の正装"というものは、アーロンにとって苦手なものの一つであった。  隣を歩くレティは慣れているのか、何も言わない。普段のアーロンの装備は鎧ではなく、魔導隊が着る防御魔法のかかったコートと制服。力よりスピードを重視した戦い方が彼の特徴だ。  だが正式な式典では度々"正装"をする。それでも歪に感じてしまうのは、サイズが明らかにあっていないからだ。  アーロンの体はレティや他の騎士に比べると小柄だ。レティが体格もたくましい精悍な風貌であれば、アーロンはしなやかな細剣を彷彿させる細身だ。  鎧のサイズは一通り揃えてあるものの、アーロンは希望しなかったため、個人用の鎧がない。その分、他の騎士よりも鎧に余裕ができてしまう。  以前レティがそのことについて尋ねると、 「必要ないものに金や時間をかけることは無駄だ」  と、答えが返ってきた。 「採寸が邪魔くさいだけだろうが……」  そう思ったのは余談だ。 「……なあ」  終始無言だったレティが口を開く。 「新人の……名前はなんだったかな、休憩室で難しい顔をしていたんだが、お前変なことを言わなかったか?」
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