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魔導国の軍隊は大きく分けて二つ。遠距離からの援護や巨大な魔法を放つ魔導隊、そして俗に騎士団と言われる近接戦を主要とする歩兵隊。アーロンが騎士団長になるということは、実質その片方の権力を譲ることとなる。
表情は変わらないものの多少は驚いているようで、返答までに僅かな間があった。
「私でよろしければ」
「そう言ってくれるとありがたい。奴がこの世を去って、もう一年になる。あれから何人も騎士団長に据えたのだが……主も知ってのとおり、あの忌々しい反逆者はなかなか優秀でな、彼の後釜という期待が負担になり、続かんのだよ」
「……私みたいな新参者の青二才で務まるでしょうか」
「何を言う。容姿端麗、文武両道、何より人望も厚い。言うところなしじゃ。なに、心配せんでもいい。奴が……ライザックがついたのも、主と同じ年頃じゃったぞ」
「承知しました。全身全霊を持って王のご期待にそえるべく、職務を全うしていきます」
その瞬間、レティは違和感の正体を理解した。
──この人は……。
以前はいかなる時も威厳が溢れていた。あのライザックを処刑しようとしたときでさえ、王からは王たる風格がただよっていた。なのに今は違う。
──そう、まるで……。
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