Dissonance

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***  夜。アーロンの部屋にノックが響く。 「どうぞ」 「こんばんは」  顔を覗かせたのはリリアンナだった。昼間とは違い、薄いピンクのネグリジェを着ている。時計の針は十二時を過ぎていた。アーロンはペンを動かす手を止め、リリアンナを迎え入れた。 「夜分失礼します。お疲れのところ申し訳ありません。この時間しか抜け出せなかったものですから」 「ご用件は」 「フィアンセの帰還を祝いに」  するりと部屋に入ったリリアンナは内側から鍵をかけ、満足気に笑みを浮かべた。 「これで完全に二人きり」 「そうですね」 「……ですから、その口調はやめろと再三申し上げましたよね? 昼間とは違うのですから、気を遣わないでください」 「分かりました……お姫様」 「ケンカ売ってますの?」  アーロンは笑顔で青筋を立てるリリアンナの唇に指を当てた。 「そんな言葉あんたには似合わない」  リリアンナは顔を真っ赤に染め、一つ咳払いをした。 「訊ねたいことがありますの。聞いていただけますか?」 「ああ」  アーロンはソファを勧めたが、リリアンナはこちらがいいと、アーロンのベッドに並んで座った。 「今度騎士団長をお勤めになるとか。父上から伺いました」 「耳が早いんだな。まだ機密事項だ」 「ええ、勿論。任命式まではヒミツ、ですよね? あなたの補佐は、ええと、あのムサ……体格のいい方ですわよね」
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